2016年1月28日

今だから知っておきたい 日本文化が誇る美しい「着物」のこと

和を楽しむア・ラ・カルト

以前よりも、着物を着ているかたを本当によく見かけるようになりました。
街でふいに見かけると、ハッとしませんか?

先日、こんな話を聞きました。
「お友達と集まる時に、習い始めた着付教室の成果を見せたくて着物を着て行ったら、
どこにいっても自分だけ『特別扱い』してもらって。一番いい席に案内されたりちょっと特別なサービスをされたり。すごく丁寧な扱いをしてもらっちゃいました」

お友達には悪いけれど、ちょっぴり嬉しかったとか。
そして次からはみんなで着物を着て集まろうと盛り上がったそうです。

和装は女性を優雅に、そして美しく見せます。
特別な日に着る「晴れ着」でもありますが今回は着物をちょっと身近に感じられるお話をご紹介していきます。

人生の節目に出会う着物の思い出

着物を着るきっかけは人によってさまざま。
例えば七五三。子供だって、袴や着物を着るとちょっと神妙なおすまし顔になります。
次に思いつく着物といえば、特に女性なら、成人式というかたも多いでしょう。
華やかな振袖を着て、和風のヘアメイクをしてもらえば、大人の女性になったような、晴れがましく凛とした気持ちになるものです。
また、最大の節目である結婚式。
最近、友達の結婚披露宴に着物を着て出席する女性がとても増えています。

どのシーンも晴れの日であり、また、日本人として伝統ある着物でおしゃれをしたいという気持ちの表れと言えます。

浴衣から着物へ興味がスイッチ

ハレの日とか、特別な日のフォーマルなイメージの多い着物ですが、
最初に気軽に着られるようになりたいと思うのは浴衣でしょうか。

最近、夏のフェスや花火大会、お祭りなどで、浴衣姿をよく見かけます。
それぞれ、思い思いに好きな柄の浴衣に好みの帯を結んで、スタンダードに着たり、個性的にアレンジして楽しんだりとその浴衣スタイルは実にさまざま。
コスプレ感覚で着こなしている外国のかたも多く、日本文化としてすっかり定着しました。
この浴衣人気から火がついて、今、着物がとても注目されているんです。

浴衣と着物の着付は同じ?

浴衣は一番カジュアルな和装のスタイルです。
素材が木綿なのでちょっと汚しても、汗をかいても簡単に洗濯できるのが手軽でいいですね。
そんな気軽な浴衣と着物の着付、実はそんな大きな差がないのです。

共通点として、キレイに着こなすには浴衣と着物、どちらも「補整」が必要です。
洋服のようにメリハリを出さないシルエットが着物の美しい着姿となります。
また、意外に思うかたもいるかもしれませんが、浴衣も着物も着付方法は全く同じ手順です。

大きく違う部分は下着です。
着物を着る時には、その下につける下着とその補整がより大切になってきます。

浴衣は、洋服用の下着の上からでも、ウエストあたりに簡単な補整をするだけでも大丈夫です。

着物は、裾除け、肌襦袢という着物用の下着の上からウエスト、胸元、腰のくぼみなどに補整をし、その上から長襦袢を着ます。

つまり、浴衣は長襦袢を着なくても良いのですが、着物はかならず長襦袢が必要です。

次に違うのが素材の問題。

着物の素材は色々ありますが、絹が一番多く、これはお手入れをきちんとしないといけないデリケートな素材。綿素材の浴衣と着物では、着た後のお手入れ方法が変わります。

そんな風に聞くと、
「やっぱり着物は管理が難しそうだし、後始末もわからないし、汚したらもう大変!」
だから着物は敷居が高い……と思ってしまうかもしれません。

確かに、浴衣ほどラフな素材ではありませんが、誰にでもできる帰宅後のメンテナンスをきちんとすれば、長くお付き合いできるのが着物のいいところ。

洋服でもコートを着て帰れば、ハンガーにかけてブラッシングくらいします。
天然繊維である着物は大切にお手入れすれば、次に着る時に気持ちよく着られるし、生地の持ちもぐんとよくなります。

着物歴の長いかたになると、脱いだ後の管理も楽しんでいます。
着物を着て帰宅した日は、風を通してあげながら、
「今日はこの着物でこんな楽しいことがあったな」と思い、
折り目正しく、丁寧に畳んであげるときは、
「今度はいつ着ようかかしら。どんな人とどこで会う時に着ようかな」と思いながらお手入れをしているそう。
着物とそんな風に向き合って、大切に長く楽しめるのって何だかとてもおしゃれですね。

「着物」でいつもとは違う自分が発見できる

着物を着ている姿は実にきりっと、そしてたおやかに見えます。
その理由はまず、帯を締めると自然に背筋が伸びるから。そうすると気持ちもシャキッとするので、だらしない姿勢にならないそうです。

当然、立ち振舞いもいつもとは変わってきます。
手を伸ばす時は袖が邪魔にならないよう、もう片方の手で袖を手前に寄せます。
それは、洋服の時にはしない美しい所作となります。

また、草履を履くと不思議と外股にはならないそう。
大股で歩けないので、楚々と歩くことになります。

こんな風に、ある意味、普段とは違う拘束をされている状態になると、
「私っていつもと違う」と感じます。人の視線も違ってきます。
みんなの視線を意識した自分を感じることは日常あまりない体験。
ちょっとエキサイティングですね。

最初の着物はどんな種類を選べばいい?

「小紋」が一番出番の多い着物で、最初に選ぶ物として最適です。
その中でも、「江戸小紋」がおススメ。
一色染めで細かい模様が特徴の「江戸小紋」は、遠くから見ると「色無地」にも見えるので、合わせる帯によって、カジュアルにもセミフォーマルにも幅広く使えます。

カジュアルに着るなら、普段用に使う「名古屋帯」を締めると気楽に着られるので街着としてぴったり。
「袋帯」という格のある帯を締めると、セミフォーマルとして改まった席にも着ていけます。

また、着物の色の選び方ですが、顔色や髪、瞳の色のほか、普段しているメークや着ている洋服を目安にします
洋服を選ぶ時の感覚を参考に、自分が着てみたいと思う物を体に当ててみましょう。
顔が明るく見えるものが正解です。
それでも迷ったら、店頭にいるプロにアドバイスをしてもらうのもお勧めします。

オーソドックスを知っているから美しい

日本の服飾文化の粋が詰まった着物は特別な衣装ではなく、従来は誰もが着ていた伝統的な日本の民族衣装です。
日本女性として、美と憧れの対象である着物をもっと気軽に楽しみたいですね。
自分で着付ができるようになると、自分流にアレンジした着こなしに挑戦したり、着物を着て出かけたい場所が増えたり。新たな自分を発見できそうです。

長沼静きもの学院では初心者向けに手ぶらで気軽に体験できる「お試しレッスン」があります。1回60分で着付の基本を学べます。
ベテランの講師が、手を貸しながら、楽しく親切に着付を指導してくれます。
着物の着付の中では帯や紐結び、そしてその力加減などが難しいそうですが、長沼静きもの学院では、初心者のかたでも簡単に着られるように開発された独自の着付小物があるそうです。

お話を伺った先生
地下良枝さん
地下良枝さん

長沼静きもの学院 教務長/日本和装教育協会事務局

学院の教室で着付講師を経て現在、長沼静きもの学院の教務長と日本和装教育協会の仕事をしています。
初代長沼 静の「人は心とからだと きものからなり そのきものは 人格と環境の上に 美をもって 表現されねばならない」という学院の教育精神をいつも意識して着物に携わっています。

これから自分で着付をしてみたいかたへのメッセージ

「着物は習うより慣れろ、なんです。1回でも2回でも多く着物や帯に触れるうちに、気が付いたらちゃんと着られるようになっています。着物は本来、日本人が日常的に着ていたものですから難しいことは全くないんですよ。着物のある環境にいると楽しい気持ちの方がふくらみます。今日は着物を着たいと思ったら気軽に着ていただけると嬉しいです。着付を教えながらも、最近はデスクワークが多く毎日着物は着られませんが、着物を着るとやっぱり気持ちが引き締まるし、この着物を引き立ててあげたいという気持ちが自然に立ち居振る舞いも変えてくれます。」